くだらないの中に

TEAM NACSとか

『子供の事情』

観に行ってからほぼ一カ月が経ちましたが、

備忘録という感じで少し書こうと思います。

 

ネタバレ含みます。

 

NACS、ラーメンズ(というより賢太郎さん)を好きになってから、

年に何度も劇場に足を運ぶようになりました。

人に「趣味は何?」と聞かれれば、「お芝居観に行くことかな」と答える。

知識こそありませんが、それなりに、観てきたと思っています。

そんな私ですが、

今回観た『子供の事情』は、寸分の隙もなく、全てが面白く素晴らしかった。

別に舞台を観に行くときに文句をつけようと思って行っているわけではありませんが、

それでも「あそこ分かりにくかったな」とか、

「間延びしたよな」とか、単純に長くてお尻が痛いとか、

まぁ色々思ったりすることもあるわけで。

今回はそれが一切なかったのです。

休憩含めた3時間弱、ずーっと幸せな気持ちで観ることができました。

三谷幸喜はやっぱり天才だなと思いますし、

豪華だなと思っていたキャストは、皆、期待を上回ってきました。

そりゃ、当日券に並ぶ人が押し寄せて問題になるのも致し方なし。

今回は自身でチケットが確保できず、

お世話になっている方に助けていただき、観ることができました。

感謝。

 

印象に残ったことをいくつか。

 

冒頭、林遣都さん演じるホジョリンの第一声。

三谷幸喜です」

もうこの一言で会場が盛り上がるったらなかったです。

観客全員が心の中で「三谷幸喜かよ!」と突っ込むところから

物語がスタート。

掴みが本当に素晴らしいなと思いました。

 

ピアノの生演奏と歌たち。

教室のセットの外れに、ピアノが置いてあり、

物語中で出てくる曲は全て生演奏で歌われます。

会場に入り、ピアノがあった時点で「歌うか?」とは思いましたが、

結構ガチの歌が多くて、これまた衝撃。

きちんとパート分けもされています。

出演されている一人は元宝塚、一人は元キャンディーズ

我らが大泉大先生も歌はお上手。

その他のキャストの方も、みなさんとっても歌が上手くて、

クオリティがかなり高かった。

けれども、歌詞の内容はほんとにくだらなくって。

揚げパンとうどんがどうだのって歌詞ですからね。

歌・曲のクオリティと歌詞のギャップにやられてしまって。

もうお腹痛くなるくらい笑いました。

 

ストーリー。

主題は「自身のポジションについて」でしょうか。

一見何も悩みがなさそうな小学生でも、

大人が思っているより、心は複雑。

クラスの中で、自分はどういうポジションにいれば良いのか、

どんなキャラクターで、誰と一緒にいて、どう過ごすのか。

今、「スクールカースト」なんて言葉がありますが、

それに近しいものは、平成の世も、昭和も、

変わらず小学生の頃から存在しているんですね。

特に女子は、この手の話に敏感。

私にもしっかりと心当たりがあります。

アニキとジョーのアニキポジションの争い。

「教室に、アニキは二人いらねぇんだよ」

ジョーの言葉は確かに事実で、

それに気づいてしまったが最後、

新しいポジションを見つけなければ、教室ではやっていけません。

なんて酷な話でしょうか。

そしてアニキの言動が段々と痛々しく見えてくる。

胸が痛い。

そういったことって、学生自体も、社会人になった今も、

似たようなことが日々起きているような気がしてなりません。

観客も皆、どこかで心当たりがあることだからこそ、

話にのめりこめるのだと思いました。

 

エンディングの演出について。

最後、セットがどんどん後ろに下がっていき、

客席から遠く遠く離れていく、という演出でした。

鳥肌が立ちました。

演劇の舞台は往々にして、

緞帳が下がる、暗転するといった演出で終わるものですが、

こんなに視覚的で、かつ体現的な終わり方があるのだと、

強い衝撃を受けました。

過去のお話、思い出の話だからこういった演出なのでしょうね。

夢から覚める瞬間に、少しずつ夢から切り離されるような、

細い糸で現実に柔らかく戻されるような、そのような感覚。

感服しました。

 

 

本当に良いものを観ました。

『子供の事情』は、10月にWOWOWで放送予定だそうです。

観に行けた方も、そうでない方も、

ぜひ多くの方に観ていただきたいと思います。